昨年7月にerimba with HARCO *1としてリリースした初のアルバム「MARICOVER」が話題のマリンバ奏者・erimbaこと大橋エリさん。フリーのパーカッション&マリンバ奏者としての活動から竹楽器におけるパフォーマンス集団『東京楽竹団』や多数のスタジオワークへの参加など、ジャンルを超えて活躍する大橋さんにマリンバの魅力について伺いました。
--まずはマリンバとの出会いをお聞かせ下さい。
マリンバ奏者としては実は結構遅咲きなんです。高三になって音大を目指すことになり、その受験勉強を始めたときに初めてマリンバに触れました。
それまでは吹奏楽でパーカッション、受験の専科ではスネアを叩いていたのですが、入試の要項を見たらマリンバの音階の演奏が試験科目の中に入っていたんですね。マリンバって触ったこともないのにどうしようか、と(笑)
そこで東大の吹奏楽部に入っていた高校の先輩が、部で使っていないマリンバがあるからと貸してくれたんです。確かサイトウの楽器だったと思うんですが・・・・・、シロフォンとマリンバの間くらいのサイズでしたね。その小さなマリンバで半年近くスケールだけをひたすら練習しました。
--プロとして活動され始めたのはいつ頃からだったのでしょうか。
活動を始めたのは大学を卒業するころでした。音大に入ってから本格的なサイズのマリンバで練習を始めて、卒業するころにはマリンバが一番好きな楽器になっていたということもあって、 マリンバでのお仕事をひとつふたつといただくようになりました。打楽器も好きなのですが、今ではマリンバの仕事が一番多いですね。
--最新作の「MARICOVER」は、多くの名曲をジャズ、ラグタイム、ボサノヴァなど、幅広いアレンジで表現していますね。普段はあまりマリンバを聞かないという人にも親しみやすい音づくりがされているように感じました。
これまでの歌ものにおいてのマリンバの音色の魅力は、ヴォーカルの後ろや間奏で“気持ちのいい音”として流れているところだったと思うんですね。このCDでは、映画『第三の男』のテーマやガーシュイン、チック・コリアもそうなんですが、テレビのコマーシャルで使われたりとか、どこかで聞いたことのある曲の中から、マリンバメインで聴いても楽しいんじゃないかな、マリンバの音色と合うんじゃないかなという曲を選びました。
今流行りのポップスからオールディーズまでわりと幅広く、マリンバ業界の人ではない相方のHARCOと相談したことで、切り口は目新しくなったと思っています。私のイメージした「気さくで普段着のマリンバ」を多くの方々に楽しんで頂けたら幸いですね。
――このCDを通じてマリンバの魅力が多くの人に伝われば、我々メーカーとしても嬉しい限りです。日常生活で音楽的感性を磨くこと、磨かされる事はありますか?
日常に音楽があれば絶対に人生は楽しくなる、無くてはならないものと思っています。でも一方では、音楽が第一ではないと思っているんですね。それは、日々の暮らしの中に音楽も当たり前にあるというスタンスだということです。こういうことを言うと楽器の先生に怒られますけど、朝から晩まで練習するというタイプの演奏家ではないので(笑)、音楽にすべてを掛けて他を捨てるとは思っていません。
生活の中に普通に音楽も存在しているのがベストですね。子育てや、料理、食べること、話すことっていう生活すべての中にです。
――大橋さんにとってマリンバとはどのような存在ですか?
私もいちマリンバファン。暮らしの中でマリンバと一緒に素敵な時間があればいいなと思っています。マリンバが音楽や楽器を好きな人たちと知り合いになる機会を与えてくれる、マリンバとは「一生の親友」ですね。
――マリンバという楽器の何がそんなにも大橋さんを惹きつけるのでしょうか?
体の近くで鳴っている木の響きにつきますね。こんなに贅沢な音の空間はほかにないんじゃないかと、初めて演奏したときは衝撃的でしたね。それはたぶん10代の後半という感受性の高まっている時期に出会ったこともあると思います。
それまではスネア中心に打楽器を演奏していたのですが、その前にピアノの経験があったので、鍵盤でメロディーを奏でることに問題はありませんでした。打楽器であり鍵盤楽器であるという自由さに魅了されました。ピアノを弾くときに、もっと体を使って演奏したいという欲求があったのでピアノと打楽器がミックスされたマリンバに出会って、すぐに「これだ!」と思いましたね。
――演奏も体全体で演奏していて見ている方にも楽しさが伝わってきました。現在ライブを始め、CDの録音などでもサイトウマリンバを演奏していただいています。サイトウの楽器のどのようなところに魅力を感じますか?
持ち運びが便利ということもあるんですが、一番には音色がとても“気さく”なところですね。サイトウの楽器は家にマリンバを2台、ヴィブラフォンも1台持っているんですが、余韻が残りすぎない音色でアップテンポとかラグタイムなんかの曲にばっちりなんです。音色には割と明るさを求めるので、飾らないサイトウの音色がよく合います。全体的にも優しい素直なキャラクターで、癖の強くない楽器が多いように感じます。
音楽の主張は楽器自体ではなく演奏者が表現していくもの。サイトウなら演奏が楽器に絶対負けずに、表現したい世界を実現してくれます。あとデザインは昔ながらの暖かみ、トラディショナルな楽器というイメージがあります。すごく気さくでチャーミングですよね。
――本日は有難う御座いました。
2008年12月 御茶ノ水KAKADOにて
インタビュアー:叶ト藤楽器製作所 齋藤徹
*1 HARCO:青木慶則のソロ変名ユニット。97年よりHARCO(ハルコ)名義で活動を開始。シンガーソングライターでありながら、キーボード全般、ギター、ドラム、 マリンバなど多くの楽器が演奏できるマルチプレーヤーでもある。テレビ・ラジオCMの作曲や歌唱、ナレーションでも注目を集める。

大橋エリプロフィール
www.colabo.net/erimba
所属グループの活動のほか、クラシック、邦楽、現代音楽、ワールドミュージック、POPSシーン、スタジオレコーディング、グラスハープ、ハンドベル、ライブ活動などジャンルを問わず活動中。 ホテル、レストラン、各種式典パーティ、また幼稚園保育園コンサートプロデュースも手がける。 最近では『バンブーオーケストラ』にて愛知万博における開会式、閉会式、毎週末のワークショップにて演奏、また5週間に渡るアメリカ演奏旅行「Arts Midwest Tour」に2年参加。
鬼太鼓座『台湾一周マラソンツアー』に助演参加。
バンドでは『HB』にて「フジロックフェスティバル2005」に出演。
『鬼太鼓座』台湾一周ツアー、「万水の彼方に」国内ツアーなどゲスト出演多数。宝塚東京公演に参加ほかジャンルを問わず幅広く活動中。
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